ぽち

近所に女子寮がある。

そこの女の子たちが外にたっているところへ
ダックスフントを連れた男の子が散歩で通りがかった。

「その犬、なんて名前？」

男の子は　すこしはずかしそうに

「ぽち」

と答えた。

若い彼女らは
ぽちときいて、わはははと笑った。

その男の子はきっとはずかしかったろうな。

私もその男の子に　同じ事きいたことがある。

ぽちとおしえてもらったとき、
どこかミスマッチが楽しくて

「そうなの、ぽちなの。」

と笑いながらぽちを思い切り撫で回した。

それ以来、私はぽちとは仲良しで、
家の前でぽちに出会うと
かならず、ぽちをなでなでさせてもらうことになった。

遠くから　少年がぽちをつれて歩いてくるのが見えると
私はタイミングよく出会えるように工夫する。

「ぽちぽち！」
とよぶと　ぽちは　どたどたどたと駆け寄って
嬉しさを体全体で表してくれるから、私も嬉しくなる。

庭では　愛犬がちょっとジェラシー。

愛犬を連れてくる少年は、優しくてすなおで
とっても礼儀正しい男の子だ。

私がぽちとなでなで挨拶をすることを
すこし楽しみにしてくれているのがわかる。

私はぽちに会ってなでなでする事も
少年と一言二言おしゃべりすることも
どちらも楽しみなの。