お彼岸
真っ赤な彼岸花が咲き乱れる坂道
父のお墓はそこを登りきった所にある。

母をつれて父の好物のおはぎとお花を手に父のお墓へ。

母の足腰はさいきん日に日に弱り
立っている事もつらく、父のお墓の前で座り込んだ。

お花の水を取替え、線香を立ておはぎを供えた。
お念仏は唱えない。
母と一緒に眼を閉じてひたすら父の顔、声を思い浮かべた。
やさしい笑顔、声。

墓地には私達二人だけ。
誰にも遠慮なく声に出して思う存分語りかけた。




そして久し振りに泊まりに来ている母と夫と私と三人で過ごす夜。

母はソファーでくつろぎ、わたしはその横で雑誌を広げた。
夫はそばで晩酌をしながらテレビの旅番組。
これでも見たらと母に渡した料理雑誌、そこにかかれていた作者のあとがきを
「ええことがかいてあるなあ。」
と母は熱心に読み始めた。
そして私に書かれていたことを語り始めた。
何度も何度も。

「母親が家族のために一生懸命料理をつくる家庭では、家族の健康は
 守られる、だから うちは安心安心、おかあさん頼みますよ。」
「はい、わかりました。」とわたし。


母が力を込めて話す。
何度も話す。
書かれていることを自分の言葉にして話す。

母がこんなに元気に話をしてくれたのは、本当に珍しい事だった。
最近の母は新聞をよむ気力もなくしていたので、あとがきを何度も熱心に読み
「この本ええことかいてあるなあ。」とページをめくる姿に内心驚いた。


この日だけの姿かも知れない。

でもこの日母が見せた姿は本物だった。
私と一緒に夫がそれを認めてくれたことが、何よりもうれしい。


コメント

la vie en rose
la vie en rose
2008年9月25日1:25

saraさんの傍でお母様もゆったりお過ごしになられることが出来たのでしょうね。様子が目に浮かぶようです。
私も先日、お墓参りを兼ねて実家に行きました。母がお盆の頃より元気そうに見えて安心しました。母がいつも穏やかな気持ちでいてくれることを願わないではいられません。

sara
2008年9月25日4:18

La vie en rose さん
 なんだか眠れなくて母の寝顔をみてそおっとおきてきました。さっそくコメントを書いていただきうれしいです。落合恵子さんは自分がどれだけ母を愛したか、母がどれだけ愛されたという思いをもてたか、それが大事なのだと書いて見えたように思います。心に残る言葉です。

蒼月しおん
2008年9月25日8:37

saraさん おはようございます。

お母様のお元気な姿・・よかったですね^^

sara
2008年9月27日5:41

しおんさん
 ありがとう。
 母の姿はその日その日でいろいろあって、この日は最高に素敵でした。
 それは今まで歩けないと思っていた人が急に歩けるようになった、その姿を見る 驚きにも似ていました。

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索