待ち合わせ

その人は　すでに待っていてくれた。

車から降りて出掛けに作ってきたバラのブーケをもらっていただく。
ずっと預かりっぱなしだったものをやっとお渡しして
お礼を言った。

「少し時間がありますか、お茶でも一緒に。」
と誘っていただいた。

めまいがひどくなって体力に自信がなくなってきたからと
昨年グループの活動から退かれた方だった。

その日はお昼に父の７回忌を終えたばかりだった。

最近の体調をお尋ねし、近況を伺った。

母は今年８７歳　この方は母より１０歳お若い。奥様も病気がちで二人で暮らしてみえて、近くに娘さん一家がみえる。

その娘さんは５０過ぎでお勤めをされながら家ではお義母さんの介護もしてみえ大変そう。

７７歳というお年ではあるが、つまらない世間話はされず詩作が趣味、写真も相当なキャリアで最近詩と写真の個展も開いてみえた。



この方と話していると、１０数年まえの私の父と話しているかのようなそんな思いがしてくる。

この方の今の状況が父母ふたりきりで長く暮らしていたその状況と重なって見える。
　


ニコニコされながら
「毎日ふたりで今日は何を食べようかと家内と話し合っていることを娘は知っているでしょうかね。」
といわれる。



　自分の両親が元気なときは息子や娘は自分の仕事や家族の世話で忙しく日々が過ぎていくものだ。

私もそうだった。

　父が先に病気になり、闘病しながら母との二人暮しをつづけ、亡くなる１年前にようやく兄夫婦が実家に戻ってきた。そして母が残された。

　父は病気に打ち勝とうと最後まであきらめなかった。
　私はできるだけのことはやったが十分ではなかっただろう。

　そして思う。

親が弱ってからではなく、父母がふたりで元気に暮らしているときに娘として父母と触れ合うときをもっと持てば良かったと。
　
　　　
　そんな気持ちをこの方にお話していると久しぶりに父に対してこみ上げてくる思いがあった。