海のにおい

きょうも　爽やかな秋晴れ。

母が来た。

夫から声がかかった。
「今日もどっかへでかけようか。」

「いいね、いいね。」
ということで海へ。

私の住むところは山までは20分、海までは40分ぐらい。

港のそばにある記念公園、ベンチまで母を連れて行って日陰でやすむ。
夫は海に突き出している散歩道を歩いていた。
かれの故郷は海に近かったから、そんなこと思い出しているのかな。

のんびり海を見ていたら、漁を終えた船が港に戻ってきた。

帰りがけ、自転車で公園に来たおじいさんが
手に持った紙切れを渡してくれようとした。
よくみると、鶴の折り紙でそれは二羽つながった鶴だった。

「あらあ、くっついてる！」
と驚くと、持っていた鶴をみんな渡してくれた。

家で折った鶴を時々公園に持ってきてプレゼントしてみえるんだろうと
この人の日常をふと垣間見た。

昼間、海を見に来る人はみんな暇そうだ。

釣りをする人、お弁当を買って自転車でやってくる人
車椅子の奥様とお昼ご飯を取って見えるご主人。
そして母をつれてやってきた私たち。

ほんの二時間のドライブだったけど
今日は母も調子が戻ったようで
その後は昼食も良く進んだ。
なによりも表情が穏やかになり私たちをほっとさせてくれた。

誕生日のプレゼントを胸に抱きしめて母は家へもどった。